血管外科(さいたま市立病院)のホームページ


深部静脈血栓症

正常な状態での下肢静の流れ 動脈を通って、下肢に送られた血液は静脈を通って心臓に帰ってき
ます。この時、心臓が血液を吸い上げてくれるわけではありません。
下腿の深部静脈はふくらはぎの筋肉の間を通っているため、ふくらは
ぎの筋肉が動くとそれに伴って押し上げられて上に流れます。この働
きを筋肉ポンプといいます。
長時間座って足を下垂したままで足の運動を行わないと、筋肉ポン
プが機能しないため、足にある血液は上方に押し上げる力が加わら
ず、足に停滞してしまいます。
そうすると、静脈から周囲に水分が滲みだし足のむくみを生じます。
また静脈内で血液が停滞すると、血液の塊(血栓)ができてしまい
ます。これが深部静脈血栓症です。そして、歩き始めた時に、その
血栓が上方に血液とともに押し上げられて肺に飛んでしまうことがあ
ります。これがエコノミークラス症候群とも呼ばれています。
深部静脈血栓症は飛行機に乗った時だけではなく、長期臥床の場
合や、手術後などにも起こります。下肢の骨折などで、ギブスにより
下肢の運動が制限されている場合にもおき易いといわれています。

 これは下肢静脈(両側の太もも)のMRI写真です。向かって右(左下肢)の大腿部の静脈の中に黒い塊が認められます。これが深部静脈血栓です。
 血栓がプカプカ浮いた状態(浮遊血栓:floating thrombus)だと、血流を妨げないので、足がむくむなどの症状がほとんど出ない場合もあります。しかし、この状態が一番危険で、肺に飛びやすい状態といえます。
 血栓がコルク栓のように、深部静脈にがっちり詰まっている状態だと、その部位より末梢はうっ血してしまうため、むくみやふくらはぎが痛いなどの症状が出ます。しかし、血栓ががっちり詰まっていると、逆に血栓は飛びにくくなり、肺に飛ぶ確立は浮遊した血栓の数分の一といわれています。
血栓が肺に飛んでも、血栓が小さいものであれば自覚症状を伴わないで経過してしまう場合も多くあります。しかし、大きな血栓が肺に飛ぶと、肺の血管が広い範囲で詰まるため、血液中に酸素を取り込むことができなくなり、短時間に生命に危険が及ぶ場合もあります。
 深部静脈の中枢側に、大きくて飛びそうな血栓が浮遊している場合には、肺に飛ぶのを予防するために下大静脈にフィルターを挿入し予防する場合もあります。
これらの従来型タイプの静脈フィルターはいったん挿入すると取り出すことができないので、最近では一時的にだけ挿入して、抜去や回収が可能なタイプのフィルターも多く使用しています。